昨日の夢の続きを話そう
「はぁ……」


側溝の段差で自転車がガタンと振動し、カゴに入れてた結婚情報誌がバウンドした。


『澪は昔からそういうの得意だから、どうにか素敵なものを作ってくれるんじゃないか、って』


たしかに私、小学生の頃は校庭や公園で枝を拾って、巣箱とかバードバスとか作ってたけど。

あれは飼育係だった和史が、陸上の大会に出場するための練習が忙しかったから。
和史の代わりに、飼育係の仕事の一環でやってただけで、すごく物作りが得意って訳じゃないんだけどな……。


「はぁ……どうしよう……」


自転車が重い。
タイヤに空気が入ってないかも。

空気入れはアパートにはないので、面倒だけど実家に寄るしかない。あまり気が進まないけど、明日からもう少し楽になるために。

坂道を登り、昔通っていた小学校まで来て私は、アパートとは反対方向に曲がった。
サドルに跨り鉛の付いたような重さのペダルを漕ぐ。


「はあ、はあ……」


緩やかなカーブを頑張って、昔キャンプ場があった自然公園の入り口までやって来た。
公園の中の遊歩道は実家への近道になるんだけど、一歩逸れると途端に山深くなる。

落葉しかけのナラやカシワの木が茂っていて、その間から海が見えた。
太陽はさっきよりももっと、水平線に近づいている。

ここに来るのは久しぶり。
同じ町内に住んでるけど、実家にはあまり帰らないし、それでなくてもこの近道を使うことはない。
ひと気がなくて今みたいに薄暗いと気味が悪いし、手入れされずに獣道みたいになっちゃってるし。

それになにより、いい思い出がない。
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