昨日の夢の続きを話そう
「あ……どんぐり」


無意識にぽつりと呟いて、私は緩慢な動きで自転車を降りた。

枯葉が足元で舞う。
踏んだら、よく乾いていて、からりと小気味のよい音がした。

なんとなく視界に動くものを捉え、私はぼんやりと目で追った。
黒い影が、向こうでジグザグにうごめいたかと思ったら、いきなり視界を横切った。


「っきゃ!」


な、なに⁉︎

驚きで反射的に体が仰け反り、もうちょっとで自転車を倒して尻餅をつきそうになった。

なんだろう、今の……。

大きな虫だったらどうしようって思ったら、途端に身震いがした。

虫は世界一苦手。

でも、今のは虫よりもっと大きな動物のようだった。
ネズミとか、リスとか、それか……。


「猫……?」


そう自分で呟いたのが、まるで合図かのように。


「っ……」


小学三年生の秋祭りの日。
この山で起きた事故の光景が、突然脳裏で断片的に蘇った。



__待って、待ってよ。

私は必死で追いかけた。
どんどん山深く。

青い鳥に手を伸ばす。
その瞬間の黒い影。

宙をもがく、体が熱い。

忙しない息遣い。
遠ざかってゆく青い影。

耳に残った、羽根の音__



「……っ痛……」


こめかみから耳の辺りに鋭い痛みが走った。
そこは、あのとき打ったところだ。
< 68 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop