昨日の夢の続きを話そう
「__待って、」


後ろから手を引かれ、私は体を前のめりにして立ち止まる。


「消毒しなきゃ。入って」


決して強引な加減ではなかったので、断ることもできたのだけど。

魅力的な微笑みにやられた、っていうか……。
優しく促されるように、私はメルヘンの世界に足を踏み入れた。


「__あの窓のとこ、僕も危ないなって思ってたんだ」


さっきすっ転んだとき、咄嗟に掴まろうとした窓枠の木が、一部剥がれていたらしい。
そこでちょっと切れただけだった。


「もっと早く修理しとけば良かったんだけど」


つるんとしていて質の良さそうな木で作られた椅子に座った私は、素直に手のひらを差し出す。
消毒液を染み込ませたティッシュで傷口を拭きながら、相手は私の目を見て穏やかに眉を下げた。


「ごめんね」
「い、いえ……。こちらの方が、すみません……」


謝られるなんて、きまりが悪い。
そもそも勝手に覗いてた私が悪いのだし。


「染みない? 平気?」


傷は全然浅くて、血なんてもう止まってた。

あまりにもハンサム過ぎて至近距離でまじまじと見ていられないので、私は上目遣いに相手をちらりと盗み見る。
目が合うと、相手は首尾よくにこりと微笑んだ。

狼狽しちゃうくらい、魅惑的な笑顔だった。
爽やかなんだけど、見透かすようにちょっと意地悪で。


「は、はぁ……大丈夫、です」


胸の奥がくすぐったい。
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