昨日の夢の続きを話そう
うちの実家は、祖母の代から【三崎の宿】という民宿をやっている。
一階の庭に面した一部と三階が住居スペースになっていて、客室は少なく、少々年季が入ってるんだけど、隅々まで丁寧に掃除が施され、清潔でアットホームな雰囲気の宿だ。
海の幸をふんだんに使った料理も人気で、ネットの口コミも上々。
「ただいま」
門の脇に自転車を停めて玄関の扉を開けると、エプロン姿の母が小走りで出て来た。
「お帰りなさい! って……なんだ、澪かぁ」
顔を見るなりそんなあからさまにがっかりされちゃ、久しぶりに帰って来たのにって落胆したくなる。
「娘の顔見てがっかりするなんて酷いよ、お母さん」
「そうよね、ごめんなさい。シュノーケリングに行ったお客様が戻らなくて。心配してたの」
母は眉を下げ、不安げに言った。
シュノーケリングのために、浜辺には大勢の観光客が訪れる。
特に秋口は魚影が濃く見えるので人気だ。
「お夕飯の時間はお伝えしたはずなんだけど……」
「それは心配だね」
「ところで、どうしたの? こんな時間に澪が来るなんて珍しいわね。夜ご飯食べて行く?」
「ううん、タイヤの空気入れを借りに来ただけだから」
「あら、そうなの」
ちょっと待ってて、と言い残すと、母は民宿の中に戻って行き、すぐに仁(じん)さんを伴って戻ってきた。