昨日の夢の続きを話そう


うちの実家は、祖母の代から【三崎の宿】という民宿をやっている。


一階の庭に面した一部と三階が住居スペースになっていて、客室は少なく、少々年季が入ってるんだけど、隅々まで丁寧に掃除が施され、清潔でアットホームな雰囲気の宿だ。
海の幸をふんだんに使った料理も人気で、ネットの口コミも上々。



「ただいま」


門の脇に自転車を停めて玄関の扉を開けると、エプロン姿の母が小走りで出て来た。


「お帰りなさい! って……なんだ、澪かぁ」


顔を見るなりそんなあからさまにがっかりされちゃ、久しぶりに帰って来たのにって落胆したくなる。


「娘の顔見てがっかりするなんて酷いよ、お母さん」
「そうよね、ごめんなさい。シュノーケリングに行ったお客様が戻らなくて。心配してたの」


母は眉を下げ、不安げに言った。

シュノーケリングのために、浜辺には大勢の観光客が訪れる。
特に秋口は魚影が濃く見えるので人気だ。


「お夕飯の時間はお伝えしたはずなんだけど……」
「それは心配だね」
「ところで、どうしたの? こんな時間に澪が来るなんて珍しいわね。夜ご飯食べて行く?」
「ううん、タイヤの空気入れを借りに来ただけだから」
「あら、そうなの」


ちょっと待ってて、と言い残すと、母は民宿の中に戻って行き、すぐに仁(じん)さんを伴って戻ってきた。
< 76 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop