昨日の夢の続きを話そう
「え! 澪、ついにお見合いする気になったの⁉︎」


母が嬉々とした声を響かせる。
私は急いでかぶりを振った。


「違う違う、麻衣子のだよ。訳あってちょっと今、預かってて」
「なんだ、そっか……」


がっかりと母は肩を落とす。


「お母さん……前も言ったけど、私お見合いする気はないんだって」
「でも先方がね、澪にぴったりだって……」
「ほら、今は仕事も楽しいしさ」
「……だけど、なかなか無いのよ? こんなにいい縁談。それに、紹介してくださった方の立場もあるし」
「……」


辟易とする私に、母は諦めない。


「お母さんね、澪にも早く幸せになって欲しいのよ。適齢期なんだし、そろそろ本気で……」
「広美、もういいだろ? こういうことはまず、澪の気持ちを優先しなくちゃ」


仁さんに止められて、不本意そうな顔つきながらも母は、ようやく口をつぐんだ。


「じゃあ、ありがとう。帰るね」


玄関を出て、門の脇に停めていた自転車のハンドルを掴む。


「あ、そういえば和史くん、結子(ゆうこ)先生も結婚式に招待したんですってね」


見送りについてきた母が、背後で言った。


「今日和史くんのお母さんにスーパーで会って、聞いたの」
「ああ、そうなんだ」


私はサドルに跨る。


「結子先生も和史くんも、澪の命の恩人よね」


結子先生とは、小学校のとき担任だった二戸(にのへ)結子先生のことで、今は他校に勤めている。
< 79 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop