昨日の夢の続きを話そう




「__えっ、それで槻川(つきかわ)さんが作ることになったの⁉︎」


翌日。
就業時間を終えたロッカー室で、向井さんが目をまん丸にして言った。


「大丈夫? 間に合うの⁉︎」
「明日休みなので、なんとか」
「えっ、一日で仕上げるつもり⁉︎」


向井さんの大声に、奥のロッカー前で制服に着替えている夜勤スタッフが驚き、首を伸ばしてこちらを見た。

咄嗟に向井さんは口元を押さえ、今度は私の耳元で小声でこう言った。


「正直私、こうなるんじゃないかって薄々思ってたのよね」


向井さんは、萩間荘の式場スタッフで、麻衣子たちの担当プランナー。

小さなお子さんを持つママさんで、いつも気さくでざっくばらんと話しやすく、出勤や退勤時間が合うとよくこうしてお喋りする仲。


「ど、どうしてですか?」


私が尋ねると、向井さんは訝しげな目になり、ロッカーの扉の裏に身を潜めた。私も倣って背中を丸める。


「だってさ、麻衣子さんの弟さん、有名な東京の美大に通ってるからセンス抜群、私ら田舎者をあっと驚かせるそりゃもう素敵なウエルカムボードを作って来るって触れ込みだったけど、就活うまくいってないらしいじゃない」
「そう、みたいですね……」


麻衣子の弟さんとは高校が違ったので面識がないんだけど、お洒落でカッコよくて、美術の才能にも溢れているらしい。
市内の画廊で働いている麻衣子にとって、自慢の弟さんだった。


「なんでも今、有名なデザイン事務所のコンペに応募するとかで、時間に余裕がないらしくって」
「へえ……」
「麻衣子さんがね、電話で早く完成させるように催促して口論になってるとこ、私何度も見ちゃったのよ」
「あ、あら……」


そこでお互いに、中腰をやめて背筋を伸ばした。
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