昨日の夢の続きを話そう
麻衣子、他にどんな要求したのかなぁ。

昨日より幾分軽くなったペダルを漕ぎながらそんなことを考えていると、ブルームーンの前のベンチに人影が見えてきた。

坂道に備えサドルから降りた私はその人物を確認して、歩調を緩める。


「__サボり中?」


制服のスーツを着て、たそがれていた和史は、半分だけ振り向いてにっと口角を上げた。
昔から変わらない笑顔。


「いんや、気分転換」
「都合の良い言い方だね」


私はわざと非難するっぽく言って、ベンチの後ろに自転車を停めた。


「いや、なんかほんとに。気詰まりしちゃって」


両目を細めて微笑みながら、和史はまた海を眺める。


「内緒な、麻衣子には」
「な、なによそれ。共犯にしないで」
「まあまあ、つれねーこと言うなよ。俺と澪の仲だろ?」


弱った風に言って、和史は片目を細めた。

日が暮れかけた砂浜で、小学生たちがサッカーをしている。青いジャージは、私たちの時代から変わらない。

暗くなる前にそろそろ帰った方がいいんじゃないかな、と、海を見ながら思った。

でも昔は私たちも、人のこと言えなくて。
子どもだけで海に入って遊んじゃダメってお互い親に言われてたから、約束を破って遊んだ帰りは水飲み場で腕や足を洗った。
乾いたら白い潮の跡が見えてくるから。

あのときは躊躇なく、お互いの肌に触れられたけど、今は。
ベンチに隣合って座ることさえ、躊躇われる。


「麻衣子に、頼まれたか? ウエルカムボードの件」


楽しかった頃の回想に暮れていた私は、不意に見上げられ、はっとした。
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