一途な小説家の初恋独占契約
茶目っ気たっぷりに、でもどこか恥ずかしそうに小首を傾げられたら、もうダメだった。
こんなに素敵な人に抗おうなんて、初めから無駄なことだったんだ。

「うん……そうみたい」
「え?」
「私……ジョーに、恋しちゃったみたい」
「……ッ!」

余裕綽々で私を翻弄していたジョーが、慌てふためく。

「どうしよう……ちょっと待って……あぁ、本当!?」
「……ふふっ」

堪らなくなって、つい吹き出してしまった。

ジョーは、自分から言ったり行動を起こしたりするのは平気なのに、私に言われるのには弱いみたい。
視線を逸らしても、少し赤らんだ耳は隠せない。

ジトリとねめつけられても全然怖くないのは、外では厳しいジョーも、私にはいつだって甘かったから。

恥ずかしさと嬉しさでクスクス笑うのが止まらない私に、ジョーは諦めの溜め息をつくと一緒に笑ってくれた。

気を取り直したのか、ペロリとデセールを平らげてしまうと、嫣然と微笑んだ。

「女性を急かしたくはないけれど、早く食べて、汐璃。この距離じゃ遠すぎる。今すぐキミに触れたい」

そう言って、長い腕を私の方へと伸ばしてくる。

「どうして、そう言った途端に手が止まるのかな? 意地悪してるつもり?」
「違っ! そんなんじゃなくて……」

ジョーがあまりに色っぽいから困ってただけなのに!

「ほら、僕が食べさせてあげよう」

スプーンを奪おうとするジョーに翻弄されて、アイスクリームはすっかり溶けてしまった。

< 115 / 158 >

この作品をシェア

pagetop