一途な小説家の初恋独占契約
ギュッと目を瞑ると、ジョーの姿が蘇る。
バスローブの胸の合わせから覗く引き締まった肌が、湯気まで漂ってきそうなほど、目の前にあった。
家の縁側で、私を抱き上げたときに触れた肌だ。
あの肌に、鎌石さんも触ったのかな……。
力を込めすぎた瞼が痛い。
ポンッと気の抜けた音が響いて、目を開けた。
エレベーターは、ロビー階についていた。
とにかく早く、ここを離れたい。
その思いだけでロビーを抜けようとすると、ふいに声を掛けられた。
「窪田!」
「……直島さん!? どうしてここに……」
「あいつの所へ行ってきたのか?」
「……」
少しためらってから、頷く。
隠し通せるものではない。
直島さんもジョーに用事があって来たんだろう。
「大塚出版の女と会ってただろう」
「どうしてそれを……」
「あいつはそういう男で、鎌石は使えるものは何でも使う女だ」
押し黙る私に、直島さんは、不快そうに鼻で嗤った。
「すっかりスター気取りだな。編集者だからって、見境なしか。大方、原稿と引き換えに部屋に引きずり込んだんだろう」
「ジョーは、そんなことする人じゃありません!」
「どうだか。お前だって、いいように使われていたんだろ? 家にまで置いてやって。仕事のために身体を売る必要なんてないんだ」
「そんな! 私そんなことしてません! それに、ジョーを悪く言わないでください! 直島さんの言うようなことをする人が、あんな小説を書けるはずないじゃないですか」
「書けるさ。所詮、フィクションの世界だ。女が喜びそうな言葉を並べたてりゃいい。そうやって、お前も誑かされたんだろ?」
あまりの言い草に、声を失った。
バスローブの胸の合わせから覗く引き締まった肌が、湯気まで漂ってきそうなほど、目の前にあった。
家の縁側で、私を抱き上げたときに触れた肌だ。
あの肌に、鎌石さんも触ったのかな……。
力を込めすぎた瞼が痛い。
ポンッと気の抜けた音が響いて、目を開けた。
エレベーターは、ロビー階についていた。
とにかく早く、ここを離れたい。
その思いだけでロビーを抜けようとすると、ふいに声を掛けられた。
「窪田!」
「……直島さん!? どうしてここに……」
「あいつの所へ行ってきたのか?」
「……」
少しためらってから、頷く。
隠し通せるものではない。
直島さんもジョーに用事があって来たんだろう。
「大塚出版の女と会ってただろう」
「どうしてそれを……」
「あいつはそういう男で、鎌石は使えるものは何でも使う女だ」
押し黙る私に、直島さんは、不快そうに鼻で嗤った。
「すっかりスター気取りだな。編集者だからって、見境なしか。大方、原稿と引き換えに部屋に引きずり込んだんだろう」
「ジョーは、そんなことする人じゃありません!」
「どうだか。お前だって、いいように使われていたんだろ? 家にまで置いてやって。仕事のために身体を売る必要なんてないんだ」
「そんな! 私そんなことしてません! それに、ジョーを悪く言わないでください! 直島さんの言うようなことをする人が、あんな小説を書けるはずないじゃないですか」
「書けるさ。所詮、フィクションの世界だ。女が喜びそうな言葉を並べたてりゃいい。そうやって、お前も誑かされたんだろ?」
あまりの言い草に、声を失った。