一途な小説家の初恋独占契約
ジョーにキスされたのは、二度目だ。
さっきのと今のじゃなくて、もっとずっと前。

ホームステイを終えてジョーがアメリカへ帰る前日、ジョーは私の頬に優しい親愛のキスをくれた。

忘れるはずがなかった。
頬にとはいえ、私が男の子にもらったファーストキスだ。

私の頬が、知らずに濡れ出す。

「……泣かないで、汐璃」

ジョーは、あの頃よりずっと大きくなった手でそっと涙を拭い、こめかみに残った雫を唇で受け止めた。

「僕はキミに会いたくて堪らなかった……こんな僕を許してくれる?」
「当たり前じゃない。私だって、会いたかった」
「……嬉しい」

私たちは、額をつけるようにして、密やかに微笑み合い、夜が更けるまで手紙を読み合った。

時おり、お互いの肩が触れ合う。
一つの手紙を覗き込んで、至近距離で目が合う。

ドキドキはしたままだったけれど、それより懐かしいような気持ちが強かった。
生き別れになった兄弟に出会えたような。
双子の片割れに出会えたような。

「不思議ね。私、自分が思ってたよりずっと、ジョーに会いたかったみたい」

8年前に一度会って以来、ううん、初めて手紙を書いてからずっと、自覚しているよりずっと、会いたかったのかもしれない。

それでいて今日会えたのが、必然だとも思えた。

「きっと、僕たちは二人で一つなんだ。魂が一緒なんだ」

私がそう思っていたなんて、初めから知っていたとでも言うように、ジョーは温かな視線で私をくるんでくれた。

「……さすが作家ね。ロマンティストだわ」

赤くなる頬をそう誤魔化しながらも、認めざるを得なかった。
私は、ジョーに嘘がつけない。

「でも……私もそう感じてる」

ジョーは、また一つ私の頬にそっと唇を押し当てた。
そうすることが、当然のように思えた。






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