キングの餌食になりまして。



「離れたくなんてないよ!!」


 堪えきれずに本音が溢れ出たとき、京極さんの手の動きがピタリと止まる。あたしを抑えつけていた方の腕の力も弱まった。


「でも、一緒に行きたいなんてお願いしたところであたしになにができるかもわからないし。京極さんの重荷になりたくないって思ったから」

「……実知留」

「いっときは支配人のこと気になってた。恋だと勘違いしてた。でも、あたしがみてるのは京極さんだよ?」

「…………」

「それでも、いくらあなた相手でも、怖い。初めてなんだから優しくしてくださいよ……バカっ……」


 目を見開くと、京極さんは、ぽつりとつぶやいた。

「初めて……?」


 やっぱり、勘違い、されてた……。

 あたしが支配人に抱かれたと思ってたんだ。


「……はい」


 京極さんが身を起こし背を向ける。


「なぜそれをはやく言わない?」

「言えなかったんです」


 言い訳みたいに聞こえてしまうから。

 流されておいて被害者ぶるのも。そんなあたしを見られるのも嫌だった。


「最悪だ。俺ひとりでめちゃくちゃ嫉妬してた」

「……!」

「本当は、律に未練あるんじゃないかって。身体だけでなく心まで持っていかれたのかと思った」

「なんであたしが、支配人に心まで持っていかれなきゃならないんですか……!」

「大好きだったんだろ?」

「それは、支配人の本性に気づくまでの話です」


 仕事熱心で尊敬してた。

 人としても男性としても魅力的だなって思った。
 思ったけど。

 今は1%も気持ちがない。


「あたしが好きなのは京極さんです」

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