キングの餌食になりまして。



 太ももを撫でていた手を掴み『それ以上は触れないで』と意思表示するが、簡単に払いのけられた。


 あなたと愛し合えるのは嬉しい。

 嬉しいけど。

 こんなのって……。


「酔った勢いでこういうことされるの、複雑です」

「勢いなんかじゃない」


 とても冷たい目を向けられ、苦しくなる。


 フィアンセと言ってもらえたのに。

 どうして悲しくなるのだろう。


「俺の身体を覚えろ」

「え……?」

「忘れられなくなればいい。そして求めろ」

「……っ、やめて」

「俺とはできない? 律には流されておいて」

「……!」

「俺は君のなに? ただの『恩人』?」


 京極さんは、あたしの恩人だ。

 だけどそれだけじゃない。

 とても、とても大切な男性(ひと)。

 
「離れていくのを笑顔で見送れる、その程度の男?」

「ちがっ……あのね、」

「言い訳は聞きたくない」


 どうして話を聞いてくれないの?


「俺から逃げたいか?」


 なんでそんなこというの……?



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