溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
「…楓さん?」

中に入ろうとしているのか?ウロウロしている楓がいて、私は声をかけた。

「…美々…仕事は終わった?」
「…はい、終わりましたよ。ぁ、シェフなら、中にいますけど、どうぞ」

ドアを開けて、中に入るよう促す。が、楓は首をふる。

「…シェフに用があって来たんじゃないんだ。美々が、その…心配で」

「…」

楓も、あの報道を見たのか。

…無理もない。あれだけ大きな会社同士の二人が熱愛何て言われれば、気にならない訳がないんだ。

「…北条さんから、何か連絡あった?」
「…いいえ、でも、私はルイさんを信じてますし、加熱報道が終われば、きっと連絡くれると思うから、待ちます」

そう言って微笑む。

「…そうはいかないかもしれないよ」
「…え?」

「…マスコミ関係に知り合いがいるんだけど、結婚も、秒読みだって言うのは、本当みたいだよ。澤田汐音の化粧品会社は、経営が悪化してて、北条が吸収する話になってる。その条件が結婚、らしくて」

「…」

楓の言葉が、遠くで聞こえる。

…ルイは、私と付き合いながら、汐音とも付き合っていて、言葉とは裏腹に、私は彼の愛人でしかないと?

…そんな事。
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