溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
「…美々」
「…そんなわけ」

私は一度唇を噛み締めたあと、目一杯の笑顔を浮かべた。

「…そんなわけないじゃないですか?ルイさんは、そんな人じゃありません。心配してくれて、ありがとうございました。ちょっとこの後用事がありますので、失礼します」

そう言って、深々と頭を下げると、楓の静止も聞かず、自転車に乗り、自宅へと走り始めた。

…そんな事、あるわけない。

私はルイを信じてる。

でも、不安がない訳じゃなかった。

それを、止まらない涙が物語っていた。

…。

家に帰るとお風呂に入り、髪も乾かさずに、布団に潜り込んだ。

…ルイの顔が浮かぶとまた、涙が溢れてくる。

私はルイが好きだ。大好きだ。

…メールしてみようかな…ダメだ、できない。

何か、すごく怖い。

スマホを握りしめ、ただ、見つめた。

その時だった。携帯が『ルイ』と、記した。

私は慌ててそれに出る。

「…もしもし?!」
「…フッ、出るの早いな」

「…」

久しぶりに聞く、ルイの声。

また、涙が溢れてくる。

「…心配かけてゴメン」

ルイの低い声が耳に響いた。
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