溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
泣いて、泣いて、泣いて…

泣きつかれて、私はいつの間にか眠ってしまっていた。

…次に目が覚めたのは、夕日が窓から溢れている夕方。

…目には、蒸しタオルが置かれていた。

蒸しタオルを取ると、楓の膝枕にいることに気づき、おずおずと起き上がると、申し訳なさで一杯なかおで、楓を見た。

楓は優しく微笑んで、私の頭を撫でる。

「…目は腫れずにすんだみたいだね」
「…色々ごめんなさい」

「…謝らなくていい。沢山ないて、ぐっすり眠ったお陰か、顔も幾分スッキリしたみたいだ」
「…」

何とも言えない顔で、楓を見ると、楓は横に座るよう促した。

私は黙って楓の横に座る。

「…なぁ、美々」
「…はい」

「…俺としばらく日本を離れてみないか?」
「…え?」

当然の提案に、驚き顔で楓を見る。

「…ニューヨークに、前から呼ばれてたんだけど、店もあったし、なかなか決心がつかなかったんだけど、弟子達に、店を任せても大丈夫になったし、また、修行もかねて、何年か行こうと思って。美々が、よければなんだけど、一緒にいかないか?向こうには話してある」

「…でも、私もお店が」

「…シェフにも、提案したよ。…シェフは快く承諾してくれてる。パティシエはシェフが見つけるからって言ってた」

「…少し、」

「…美々?」

「…考えさせてください」

「…わかった…でも、2週間後には立つから、それまでに返事がほしいな」

「…分かりました」


「…美々、北条さんから離れて、一から始めよう。今の美々は、ガラスの心だ。壊れてしまわないうちに」


そう言い残して、楓は帰っていった。
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