溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
…彼女からの、最後のメールも消してしまった。

『3月○日、午後3時の飛行機で、ニューヨークに立ちます。何も言わずに行くことを許してください。私は今も、ルイさんが大好きです』

フライトの2時間前。

このメールを見れば、十分に間に合う時間だった。

彼女はきっと僅かな期待を込めて、メールをしたに違いない。

罪悪感はあったが、汐音はそれを消した。

「…社長の携帯に何か?」
「…?!」

社長室に書類を持って入ってきた秘書の一言に、汐音は体をびくつかせた。

「…澤田様?」
「…ううん、何でもないの。携帯が落ちてたから拾っただけ」

「…左様ですか。それでは失礼します」

書類を起き、秘書が出ていった。

…汐音は安堵のため息をついた。

…が。

秘書は、度々怪しい行動を取る汐音が気になっていた。

…一週間後。

秘書は、メールを確認していた。

ルイの携帯のメールも、携帯が壊れたり無くした時のために、全て転送されるようになっていた。

プライベートな内容は、気づくと直ぐに他言することなく削除することになっていたが、どうしても気になるメールに気がつき、慌てて社長室に入った。

「…ノックもせずに何事だ?」
「…すみません、ですが、どうしても確認していただきたいものが」

秘書の慌てように、ルイは立ち上がり、秘書に続いて、メールを確認した。



こんなメールは知らない。


ルイは、驚いたように秘書を見た。
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