素敵な王子様の育てかた。

これまでどんな困難なことでも、結局は引き受け強気でぶつかってきた。
けれど、今回のことはなぜか気がとても進まない。

かしこまりました、と口に出すことができずにいた。


なぜこんなにも気持ちが乱れているのだろう。
分かっていたことなのに。

気持ちを落ち着けるように、ふう、と息を吐く。

言えない、言いたくない。
でも、断ることはできない。


「……かし、こまりました。できるだけ、やってみたいと思います」


ようやく言えた言葉は、微かに震えていた。
王妃様は私の返事に、「よろしくね」とだけ言って、私の肩を軽く叩く。


叩かれた肩がとても重く感じた。
まるで、いくつもの石を乗せられたような感覚。

私は王妃様に礼をして、足早にその場を去る。
その時王妃様の視線を感じたが、振り返ることはできなかった。


現実味を帯びた、王子の結婚。
王子が変われば変わるほど、どんどん私との距離が広がり、手の届かない存在になっていく。

でも、それでいいはずなの。

彼は王子で、のちの国王様で。
私はそんな王子にお仕えする、ただの侍女でしかないのだから。

なのに、なぜ?
胸が締めつけられるように痛むのだろう――。


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