素敵な王子様の育てかた。
「ライト!ここを開けなさい!部屋にいるのは分かっているのよ!」
声の主は、王妃様だった。
細められた王子の目が、鋭いものに変わる。
「……来たか」
「どうするのです?ライト様」
「どうするもなにも、話をつける。誰になんと言われようと俺の気持ちは変わらないから」
後ろに回されていた手が離れ、王子は気持ちを入れ替えるようにひとつ大きく呼吸をすると、扉の鍵を開けた。
立っていたのは眉間に皺を寄せた王妃様と、その後ろに国王様とリフィト王子。
三人はそのまま部屋の中へと入った。
王妃様のオーラに私の足は自然と震えてしまった。
どんな苦難をも耐えられそうだと思っていたのに、いざ目の前にすると恐ろしく感じてしまうのは、やはり王妃様としての威厳があるからなのだろう。
「ライト、まずは説明してちょうだい。言ったわよね?あなたには相応しい家柄の令嬢と結婚させる、って。それなのに、こんな真似をして」
部屋の扉が閉められるやいなや、王妃様は王子に向かっていきなり声を荒げる。
しかし王子は動じない。
毅然とした態度で言葉を返した。
「説明もなにもこの通り、俺はララと結婚する。ララ以外の女は絶対に娶らない」
「でもララはあなたの侍女でしょう!?」
「だからなんだよ。侍女として傍にいてくれて、ララを知ることができたから俺は惹かれたんだ。侍女なんてただのきっかけに過ぎない。好きになったら侍女だろうがなんだろうが関係ない!」