王子様とハナコさんと鼓星
社長のお母様は社長によく似ている。
顔のパーツのどれを取っても2人は似ていて、微笑んだ表情は特にそっくり。
逆に会長とは余り似ていない。会長の顔は見たことがあるけれど、こうやって姿を見るのは初めてで、どちらかと言えば針谷さんのように落ち着いた雰囲気の人。
「華子さん?今日は凛太朗が結婚したい人を連れてくるなんて言うものだから、寧々さんが気合をいれてシェフと料理を作ってくれたのよ」
出された料理は全て大皿のイタリアン料理。どれを見ても美味しそう。
「ほら、凛太朗?華子さんのお皿に取り分けてあげなさい」
「わかったよ。華子、お皿ちょうだい」
「は、はい。ありがとうございます」
社長は飲んでいたワインを置いて椅子から立ち上がる。備え付けられたトングを持ち、4人分の前菜を取り分けて行く。
「それで、籍はいついれる予定なんだ?」
受け取ったお皿を置くと、会長は社長と私を交互に見ながら言う。
「明日、華子のご両親に会いに行ってからにしようと思って。ちょうど、明後日が大安だから、仕事終わってから提出しに行こうかと考えているよ」
「そうか。遅かれながら、結婚おめでとう。華子さんもこんな息子を選んでくれて感謝するよ」
「え、あ、いえ。そんな…」
「そうそう。いつになっても恋人の1人も連れてこないから、何回もお見合いを勧めていたのに断っていたのは、恋人がいたからなんて知らなかったわ。それならそうと早く言いなさいよね」
「ごめんね。会社のスタッフに手を出したようなものだから、プロポーズを受け入れてくれるまで言い出せなくて」
お皿に料理を分け終わると、社長は腰を下ろしてワインを飲んだ。
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