王子様とハナコさんと鼓星

***


「うん、美味しい」

カレーを口にすると凛太朗さんは開口一番に美味しそうと呟き、満面笑みで私にそう呟いた。


「本当ですか?良かったです」


「本当だよ。ちょうといい甘さだね。肉も柔らかい。野菜も大きめに切ってあって食べ応えがある。料理苦手って言っていたけど、上手だと思うよ」


「カレーだけは得意なんです」

「そうなんだ。このサラダも美味しいよ」

「それはレシピを検索して作りました」

「上手。週に数回は食べたいくらい」

「ありがとうございます」

(良かった。美味しいって言ってくれて…と、言うか褒め過ぎ)


食べ進める彼を前に私もスプーンを手に口に運ぶ。


「美味しい料理が食べられて幸せだよ。あ、そうだ。華子って次の休みはいつ?」

「確か、明後日ですね」

「明後日か。なら午後から出掛けない?」


突然の提案に食べる手を止める。

「もしかして先約とかあった?」

「い、いえ」

「何処か行きたいとかある?」

「それなら、実は見たい映画があるんです。どうですか?」


実は明後日公開の洋画がある。テレビのCMで予告を見て気になっていた。


「いいよ。午前は仕事があるから終わり次第になるけど、家で待ってて」

「はい」

嬉しい。楽しみかも。1人で映画に行く事が出来なくて諦めていた。桜は仕事が忙しいから声を掛けにくいから。
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