王子様とハナコさんと鼓星


私の話を聞きながら、女性警察官はペンを走らせて話した事を用紙に細かく書いていく。


「そうですか。目元が離れていたとか、肌の色とか…なにありますか?」


「ごめんなさい。そこまでは覚えていません。私もこういう事は初めての経験で戸惑って混乱していて…」

「大丈夫ですよ。落ち着いて話して下さい」


私とさほど年齢の変わらない女性警察官。落ち着いた声色に大きく息を吸い込みコクリと頷く。

「は、はい…」

「実はですね、この事と関係がないような気がしたので黙っていたんですが、3日前にも少し離れたタワーマンションで女性が金品を奪われた事件が2件ありました。その時は単独犯でまだ犯人は捕まっていません」


「そうなんですか?」

「はい。そこに来て今回の件で3件目。富裕層を狙った犯行です。関連性は強くなって来ました。最近、誰かにつけられたりしましたか?」


「いえ。最近、あのマンションに住むようになりましたから」

「新婚ですね。他の2件も新婚です。婚約指輪も奪われています」


(え…う、うそ…)

無意識に左手を握りしめる。

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