王子様とハナコさんと鼓星



***


「では、犯人とは面識はない。と、言うことですね」

「は、はい」

「そうですか。では、些細な事でも良いんです。どんな体型や身長に顔など、思いつく事を教えて下さい」


あれから、バックヤードにある椅子に腰を下ろしていると最初に目があった店長らしき男性が警察に通報をしてくれた。

10分もしないで女性と男性の警察官が到着すると、そのまま車に乗って怪我をしているからと病院に連れて行かれた。


緊急外来で骨や頭を打っていないかを調べられる。嬉しい事に身体の所々を擦りむいただけで骨にも脳にも異常はなかった。


丁寧に擦り傷を手当てして貰い、手と膝は少し傷が大きかったため消毒と薬を塗り被覆材で覆う。

その処置が一通り終われば、病院側が用意してくれた個室で警察官2人から事の顛末を聞かれ話していた。


「雨具とマスクをしていたので、顔はよくわかりません。でも、顔見知りではないと思います。バックを奪った1人は細身で175センチはあった気がします。もう1人は私より少し高かったので165センチくらいで、体格が良くて低い声でした」


数時間前の事を思い出しながら、警察官に伝えることかれこれ30分。その時の事を身体で再現しながらバックを奪われた事と指輪の事や追いかけられた経緯、そして何故あのコンビニに駆け込んだのか。


一つ一つとても細かく話し、ぶつけられる質問に答えた。

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