王子様とハナコさんと鼓星
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「い、いただきます」
両手を合わせ、取り包み紙を外す。いつもは大きな口で食べるけれど、今日に限っては大人しく小さくかじって食べる。
いつも通り美味しいのに、生きた心地がしない。ゆっくりと口に含んだ物をゴクリと飲み込むと私をじっと見ていた社長をチラリと見た。
「あの…やっぱりダメでしたか?ここのお店」
「全然。ただ、ちょっと予想外だったかも」
「す、すみません」
あれから社長と夜道を何を食べるか迷いながら歩いた。
悩んで悩み、悩み抜いた結果、たまたま近場にあったハンバーガーチェーン店に入ることにした。
適当に注文してお金を払おうとすると、社長は私が財布を出すより早く胸ポケットからカードを出してきた。
それを止める私を手で制し、スマート過ぎる行動に「結構です」とは言えなかった。
このお店は注文してから作り持ってきてくれる。お店の1番奥の外から目立たないテーブルに座った。
暫く待つと店員さんが品を運んで来る。お腹が空いていた為、食べたのだが…社長は手をつける事なく微笑みながら私を見ている。