王子様とハナコさんと鼓星

「一ノ瀬くん!おはよう」

「おはよう、華子さん」

「また会ったね。今日もメニューの試飲会?」

「いや、これから他店舗で研修会。上のオフィスに顔を出してから行く所」

バーテンダーの人は月に何回か他店舗合同の研修会がある。今日がその日なんだ。

「そっか。頑張って来てね」

「うん。あ、なんか肩にゴミがついてる」

「うそ。どこどこ?」

一ノ瀬くんが肩に手を伸ばして、肩のゴミを取る。白い糸くずだった。ゴミを貰って、ゴミ箱に捨てる。

「ありがとう。あ、そういう一ノ瀬くんも服にゴミがついてる」

袖口の埃を取り、何となく気になって背中のゴミも取った。

「夜の勤務が終わって、仮眠室で寝たでしょ?一ノ瀬君たちの仮眠室は掃除をやらな過ぎなんだよ。してあげたいけど、仮眠室はそれぞれの部署の仕事だから出来ないの。きちんと掃除しないと」


「言われてみれば、1週間以上やってない。男ばかりだからな。主任に怒られる前にやる」

「そうだよ。はい、もう大丈夫」

最後にスーツの襟を直し、少し曲がったネクタイを整える。


一ノ瀬くんは凛太朗さん並みにスタイルが良いからスーツがよく似合う。
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