王子様とハナコさんと鼓星
『ごめんね。連絡が遅くなって』
「いえ。お仕事お疲れ様です」
3日目の夜、凛太朗さんから電話が掛かってきた。
『こっちに着いてバタバタしててさ。毎日電話をするなんて言っていたくせに。で、俺が居なくて寂しい?』
電話越しに聞こえる声。きっと表情は見えないけど笑っていると思う。
「寂しいです。でも…ゲンマがいてくれるので、まだ大丈夫です。今日は寧々さんが来てくれてご飯を作ってくれました」
『そっか』
「はい。明日は友達と買い物に行きますね。風間さんに頼んだら連絡をくれれば送迎をしてくれると言うので…いいですか?」
風間さんとは会長の2人目の秘書。針谷さんがいない間に送迎をしてくれている男性。
『まだ犯人は捕まってないのに?まぁ…でも、いいんじゃないかな。あまり夜遅くならないようにね』
「はい。凛太朗さんは…これからの予定は…」
『今は会議が終わった所。これから、新メニューの試食会ともう一件会議があるんだ。夜にはパーティーに参加してくるね』
「お忙しいのに、お電話ありがとうございます。声が聞けて良かったです」
そう言うと「俺もだよ」と返って来た。