王子様とハナコさんと鼓星
荷物を片手にリビングのドアを開く。音を聞きつけたゲンマが足元に近寄ってきた。
身体を擦り付け、しゃがんで抱き抱えれば大人しく抱かれる。電気を付け、少し暖房を強めてカーテンを開けた。
その時、バックの中のスマホが音を立てる。ゲンマをおろしてからスマホを取り出す。
知らない番号からの着信。この番号って、前に何回か掛かって来たっけ。誰だろう。知らない番号は出たくないけど、3回も着信があるって事は私の事を知っている人なのかもしれない。
嫌だな。物凄く嫌な予感はする。そっとテーブルに腰を下ろして通話のボタンを押す。
ビクビクしながら耳元に持って行く。『華子?』と名前を呼ばれ息が止まった。
大きく開いた目を力強く閉じ、唇を噛み締める。
もう、いい加減にして…私を解放して…
「なに…聡くん」
『やっと電話に出てくれた。ずっと前から電話掛けているのに出てくれないからさ』
「待って、何で番号…」
聡くんと別れてから、電話番号は変えた。私の番号は分かるわけない。共通の友人だって、今は付き合いが無いから教えてないのに。
『そんなの簡単だよ。地元のヤツを辿って、やっと聞いたんだよ。それより、怪我はどう?』