王子様とハナコさんと鼓星
『そうなんですか…』
『慣れればそのうち良さが分かるわよ。初めてで、真っ白になるとかないない!』
そうなんだ。って、納得した。
それからと言うもの、聡くんとは会うたびに身体を重ねた。何度も何度も重ねた。
それなのに、周りのみんなが言うような感覚になった事は一度もなかった。
聡くんは私とは違って、良いと思ってくれるのか、過敏に私の身体を求める。好きだったし、肌を合わせる事自体は嫌いじゃない。
何よりも彼が私を求めてくれる事が嬉しかたった。
それが3ヶ月続いたある日のこと。雪が沢山降る真冬のこと。
『華子って…俺とするのあまり気持ち良くない?』
『えっ?』
身体を重ねた後、脱ぎ散らかした服を着ていると私の背中に向かって聡くんがそう呟いた。
『いや、なんとなく。何回もやってるのに今だに反応良くないから…俺って下手なのかって落ち込んでる』
『そ、そんな事ないよ。いつも、良いって思ってるよ』
心にもない言葉に聡くんは笑顔になって、私の身体を抱きしめる。よかった。そう囁いて喜ぶ彼を前に私の心はモヤモヤとしていた。
聡くんに悪い。聡くんに落ち込んで欲しくない一心で、彼とする時は良いフリをするようになっていった。それを演技だと知らない聡くんは喜んでくれて、その笑顔を見てホッとしていた。