王子様とハナコさんと鼓星
エレベーターの中で1人になると、ポロりと涙が溢れる。手で化粧が崩れないように中指で拭うと二階に到着。
帽子を深く被りエレベーターを出た。朝から怒鳴られ気分はどん底。奈落の底よりはるかに下に突き落とされたよう。
台車も何故かいつもより重い気もする。
「はぁっ…」
(志田さんって、なんであんな言い方しか出来ないんだろうな…せめて今までは見なくても良かったけど、次からは見てね。とか、そう言えばいいのに…しかも、みんな見て見ぬふり)
性格が悪いのかもしれない。それが社会に出るって事なのかもしれないけど、そういう理不尽な怒りは納得出来ない。
この前もその前も職場が長続き出来なかったのは、そういう理不尽な事ばかりでダメだった。社会不適合人間なんだって思った事も何回もある。親に心配されるほどボロボロになって辞めた会社もあって、暫く無職でいた時に桜に会った。
相談してこのホテルに就職出来たけど、どこも同じなのかもしれない。今、頑張れているのだって桜がいるから。
「あんなことが続くならキツイかも」
そう呟いてトイレの前につく。清掃中の看板を立てると、ふと窓の外にスズメが見えた。
寒い季節で身体はまんまるに膨れている。
「鳥はいいな…自由で羨ましいよ。ねぇ、空を飛べるってどんな気分なの?」
窓に近づき、情緒不安定だと思われても仕方がないような事を言ってみる。