王子様とハナコさんと鼓星
「人間って本当に大変だよ。なんて、鳥も大変だよね…」
「そうだね。自分より大きな鳥に狙われちゃうかな。会社と同じだね。弱い立場の者を強い者が支配する。出る杭は打たれるって言うのかな?それとも弱い者いじめ?」
「本当にそう!弱い者いじめ!よく分かっているじゃないですか…って…あっ」
聞こえてきた声に振り向くと、頭から帽子を奪われる。手でクルッと回してその帽子を自身の頭に被せた。慌てふためく私を前にその人は楽しそうに口元を釣り上げる。
「しゃ…社長…お、おはようございます」
「おはよう、村瀬さん」
「あ、そうだ。昨日はご馳走様でした。ありがとうございます。あと、お菓子もとても美味しかったです」
お辞儀をして少し距離を取るように背後にさがった。気付かないとは思うけど、泣いたのを知られたくなかったから。
「喜んで貰えて良かったよ。と、言うか…なんか元気ないね」
「そうですか?」
「表情が少し暗い気がする。なにか嫌な事でもあった?」
離れた距離をつめ、顔を覗き込まれそうになりまた一歩下がる。
「いえ、なにも…」
「何もないのに、鳥とお話ししていたの?」
腕を組み、また一歩近づかれる。近付いた距離に気まずい感じがして私もまた一歩下がるとお尻に台車がぶつかった。
「お、恥ずかしい所をお見せしてしまい、申し訳ありません。わ、忘れて下さい」
「恥ずかしくなんてないよ。動物とか家で飼ってた?そういう1人って、つい話しかけちゃうよね。クセでさ」
そう言うと奪われた帽子を取り、私の頭に被せ被せてくれる。
「なんかよく分からないけど、無理はダメだよ。何かあれば相談してね。村瀬さんは特別に俺が直々に話を聞くよ」
「ありがとう、ございます」
冗談だろうけど、そう言ってくれるのは嬉しい。と、言うか傷付いている時に優しい言葉を掛けれるとまた泣きそうになる。