王子様とハナコさんと鼓星
駆け足で、来た道を戻った。身長の高い凛太朗さんは人混みに紛れてもすぐに見つける事が出来る。
人の流れの中、ぶつからないように人を避け彼の背中を必死に追いかける。名前を呼ぶ声は聞こえていないのか振り向いてはくれない。
それでも負けじと名前を呼び、手を伸ばして衣服を掴んだ。
「り、凛太朗さん…ま、待って」
彼が足を止め、私は乱れる呼吸を整える。胸元の服を握り、顔をあげれば彼の冷たい視線が私に突き刺さる。
「華子、手を離して」
「え…あ、ごめんなさい」
低い声で咎められて手を離すと、凛太朗さん私の前に真っ直ぐ立つ。
「俺さ、いまどんな顔をしている?」
「どんなって…怒って…ます、か?」
「そうだよ。腹わたが煮え繰り返るほど怒っているよ。俺ってさ…あの男との過去や、大怪我をした事とか…相談出来ないのは、信用出来ないから?」
「そ、そんな事は…」
「なら、なんで…過去の事とか怪我をした事を話してくれなかったの?人づてに聞いた俺の気持ちわかる?」
はっと空気を飲む。首を左右に振るもの、凛太朗さんが向ける視線は変わらず冷たい。