王子様とハナコさんと鼓星


「なら、尚更一緒に帰りましょう…」

「だから…苛ついているから」

「一緒に帰りたい」

頭上で凛太朗さんが息を吐いたのが分かった。


「分かった。でも…手を出さない約束はしない。もう、待てない。ただの嫉妬心でも壊れそうなのに、信じて貰えなかった行き場の無い感情を受け止められるの?」


「…はい…」

「優しく出来ないと思う」

「凛太朗さんは…優しくしてくれるって、信じています」

「それ…今のタイミングで言うの狡い。やっぱり華子は傲慢なオリオンを殺す蠍だね。俺は何回殺されればいいのかな…こんなに俺を振り回すのは…華子が初めてだよ。悔しくて…辛い」


荒々しく伸びた手は私の身体を抱きとめる。そして、あっと言う間に離され止めたタクシーに2人で乗り込む。

マンションについてエレベーターに乗り、部屋がある階に到着した。

部屋の鍵を開けて、背後でドアが閉まる。


お風呂に入って来ます。開口一番にそう言おうと思っていたのに、そんな事はさせてもらえなかった。

ドアに身体を押し付けた後、嵐のようなキス。


それが終わると手を引かれ、凛太朗さんの寝室の寝具に押し倒された。優しく出来ないなんて言葉は嘘。

初めから最後まで、凛太朗さんはずっと優しかった。こんなにも丁寧で優しく男性が触れてくれるなんて知らなかった。

聡くんしか知らない私は、凛太朗さんの優しい抱き方に蕩けていった。
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