元社長令嬢は御曹司の家政婦
「そもそも君は正規採用ではなく、まだ試用期間だったんだ。ここに、試用期間中に社会人として通用しないと思ったら容赦なく解雇してくれて構わない、甘やかさないでほしいと書いてある」


九条秋人は淡々とした口調でパパの手紙を読み上げると、それを私に手渡す。......そんな......、倒産したあげく勝手に海外逃亡して、さらにはこの仕打ちって、どこまで私をコケにすれば気がすむのよ!

パパへの怒りがふつふつとわいてきて、思わず手紙をグシャリと握りしめる。


「そこで、君に三つの選択肢を提示しよう」

「選択肢......?」  


突然言われたことの意味がよく分からなくて聞き返すと、ブラックのスーツに身を包み立っている姿さえも恐ろしいほどに絵になる九条秋人はゆっくりと頷いた。


「一つ目、心を入れ替えて真面目に働くこと。
改善が見られたら、解雇は取り止め、正式に採用することも考えよう。
二つ目、私の妻となること。
これは私も不本意ではあるが、しかし......双方にとってそう悪くない話だ。
そして、三つ目だが、」

「ちょ、ちょっと待って!い、今何て言ったの?」


腕を組んだまま、決定事項を読み上げるかのように告げる九条秋人の話を敬語を使うことも忘れて大声で遮る。

だって、今、何?妻?


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