Dangerous boy
尚太君の手に握られていたのは、私のスマホだった。

「あっ、私のっ!」

「やっぱり。そうだと思ったんだ。」

その時の尚太君の笑顔を見て、またドクンっと胸打つ。


これだ。

どうして部長の時はドキドキするのに、胸が打たないのだろう。


「有難う。」

私が手を差し出すと、尚太君はそっと私に耳打ちした。

「俺のLine、入れておいたから。」

そう言って、尚太君はスッと離れた。

「倉本!行くぞ!」

少し離れたところから、高藤部長が私を呼ぶ。

「あっ、すみません!今、行きます!」

私は尚太君に頭を下げて、部長の元へ走った。

「有難うございました!又、お越しください!」

尚太君の声が、背中に響く。

「ご馳走様!」

部長が尚太君に手を振り、私達はタクシーに乗った。


しばらくして大通りに出ると、高藤部長は口を開いた。

「あのバーテンに、何言われたの?」

「えっ?」
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