副社長と秘密の溺愛オフィス
「はぁ……」

 二度目の大きな溜息をついたとき、コンコンっとノックの音が響きそして返事をする前に扉が開く。

 副社長室に通じる扉だ。向こうからやってくるのはひとりしかいない。

「いかがいたしましたか? 甲斐副社長」

 立ち上がり出迎えると、髪をかきあげながらこちらに歩いてくる。

 見るとどこかその顔に不満の色が見て取れた。

「まいったな。これ」

 わたしのデスクの上にある週刊誌を指差した。掲載された記事のことを言っているらしい。

「ここって、この間無理して取材受けたところと同じ出版社だろ? これくらいの記事もみ消すくらいしてくれてもいいと思わないか?」

「まぁ、お気持ちはわかりますけれど、出版社には出版社の事情があるでしょうし」

 わたしの言葉が気に入らなかったのか、ますます不満をつのらせた。

「俺にだって、俺の事情があるんだ。あ~また面倒なことになるぞ」

 言い終わるか終わらないかのところで、彼のスマートフォンが鳴り響く。
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