副社長と秘密の溺愛オフィス
 以前のわたしはこういったパーティでは、紘也さんと同行していたとしても秘書という立場なので、ときには酷い扱いをうけることもある。食べたお皿を下げるように渡されたり、汚れたハンカチを洗ってくるように言われたり――小間使いのように扱う人さえいた。
 けれど、彼女は違う。わたしたち一般の社員にも、またホテルなどの会場の人にも気をくばっていて、根っからのお嬢様だと感じた。

「深山さん?」

 思わず疑問形になってしまった。そんなあたしに幹也さんが突っ込みをいれる。

「いやねぇ。そんな他人行儀な。昨日今日知った仲じゃやないでしょう?」

 紘也さんならそうかもしれないが、中身は明日香なのだ。何度か顔を合わせたことはあるが、ちゃんと話すのはこれがはじめてだから他人行儀であってもしかたがない。

 しかし続く幹也さんの言葉に衝撃を受ける。

「もう、仮にも婚約するかもしれなかったふたりなのに、なんか冷たい。深山さんなんて」

 こ、婚約? 

 紘也さんに、見合い話も何度もあったし、恋の話は日常茶飯事だ。けれど深山さんの話題は、はじめてのような気がする。

「幹也さん、それはうちの父が、わたしが甲斐家に嫁げばいいと言っていただけですから」

「え? そうなの?」

「いまさらって話ですよね」
< 100 / 212 >

この作品をシェア

pagetop