副社長と秘密の溺愛オフィス
「あの女優が言っていることは真実からかけ離れたことばかりですが、わたしとの結婚の話は本当です」

 はっきりと言い切ると、黒田の顔が引きつった。

「なにか事故のせいで脅されて、仕方なく――とかではないのか?」

 どうして俺が明日香を脅すっていうんだ。ムッとしたけれど、得意の作り笑いを浮かべた。

「紘也さんは脅したりなんかしません。わたしたちふたりで決めたことです」

「そうなのか? 目的のためには手段を選ばないと言っていたのは明日香だっただろ。なにか理由があって、婚約話を押しつけられているんじゃないのか?」 

 半分ぐらい図星をつれて、ぎくりとする。たしかに理由があっての婚約話だ。でも脅してなんてことはない。断じてない……はず。

 いやいや、こんなとろこで弱気になってどうする。

「そんなことは、絶対にありません! あんな素晴らしい人と結婚できるなんて、わたしってば世界で一番幸せだと思ってるんですから」

 ちょっと言い過ぎ感もあるが、それくらいの気持ちにしてやる自信はある。

「だったら、仕事を辞めて俺の仕事を手伝うって話は? 開業準備は着々とすすんでるんだけど、やっぱり明日香ちゃんと一緒に働くのは無理なのか?」

 やはりこれだったのか、辞表の理由は。

「本当にそれでいいのか? あいつの傍で働くのがつらいから、辞めたいって最初に言ったのは明日香ちゃんだろう?」
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