副社長と秘密の溺愛オフィス
「そんな、心配そうな顔しなくていい。お前のことはちゃんと俺が幸せにしてやるから。かわいい弟にもちゃんと誓ったから」

 わたしのわずかな表情の変化に彼は気がついていたのだ。

「心配なんかしなくていいんだ。お前は俺の家族――俺の大事な妻になるんだからな」

 胸が甘やかに締め付けられる。

 すぐに思い詰めてしまうわたしに対するリップサービスかもしれない。けれどその言葉で、わたしの気持ちが救われる。 


 もしこのまま――この体のまま戻らなくても――いいかもしれない。そうすればわたしは彼の傍にいられるんだから。 
 そんな邪な考えが思い浮かぶほど、今彼が言ってくれた言葉がうれしかった。

「わたしを、本当の妻にしてくれますか?」

 彼が寝息を立て始めたころ、そうつぶやいてみた。きっと彼には届いていない。だから言えた言葉だ。

 わたしはそのまま、気持ちよさそうに眠る彼の頬をしばらく撫で続けたのだった。
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