副社長と秘密の溺愛オフィス
「明日香の体……全部見てるはずなのに、今まで見てきたのと全然違うな。すごくきれいだ」

 彼の言葉に思わず息をのむ。一瞬たりもとも、彼から視線が外せない。

 ゆっくりとわたしの髪の束を取り、そこに口づけた。その後、その髪を耳にかけ、輪郭を指でなぞる。それと同時に反対側の耳たぶを甘噛みした。

「ん……いや、耳っ」

 普段は他人に触れることがない場所。そこを刺激されると、ぞくぞくと何かが体の中を駆け巡る。そんなわたしの反応を知ってかしらずか、耳への舌での刺激を続けながら、全身を大きな熱い手のひらで撫でる。その後を追うように、身体中に彼のキスが落とされた。

 そのたびに、新しい刺激がわたしの体を駆け抜け、あられもない声を上げさせた。そしてそれを楽しむかのように、彼の愛撫が激しくなった。それにつれて彼の呼吸も忙しなくなる。目をあけると、彼の熱のこもった切なげな瞳とぶつかった。

「明日香……痛かったり、無理だったら言って」

 体を起こした紘也さんの言葉で、ここから先に進むのだということがわかった。

 思わず唇を噛んで、うなずく。

「せっかく、気持ちよくさせてたのに、また体がこわばった。緊張してる?」

「……はい」

「そっか。でも俺も同じだから」

 紘也さんの意外な言葉に、わたしは軽く目を見開いた。


「当り前だろう。『最高の思い出にする』なんて言った手前、失敗できないし。それに……」

 一度言葉を区切り、わたしを抱きしめた。そして耳元でささやく。

「俺も明日香が欲しくて、そろそろ限界」

 熱い息が耳元をくすぐる。
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