副社長と秘密の溺愛オフィス
「あーーーーー! ったくなんだってんだ」

 髪をかきあげて、天井を仰ぐ。

 昨日の明日香をこの腕に抱いた。間違いなく彼女は俺の腕の中にいた。白くて華奢な身体で、暴走する俺の心と身体に必死で応えてくれた。お互いの気持ちが通じ合ったと思ったのは、俺だけだったのか。

 いや、違う。そんなはずない。

 そう必死で思い込もうとした。けれど現実は残酷で。いつも彼女が立って、朝食の準備をしているその場所は、ただ朝の冷たい空気だけが流れていた。

「どうなってるんだ」

 問いかけたところで、どうにもならない。

 ただ呆然と立ち尽くす俺は、鳴りっぱなしになっている目覚ましのアラームも止められないほど、動転していた。

 
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