副社長と秘密の溺愛オフィス
 さっきから何度時計を確認したのだろうか。腕時計の秒針が進むのをイライラしながら睨みつける。それでもいてもたってもいられずに、部屋の中をぐるぐると歩き回る。

 ポケットに入れてあった手を出して、もう一度腕時計を確認した。さっきからまったく針が動いていない。この時計壊れてるんじゃないのか⁉

 少し落ち着こうと、髪をかきあげ息を吐く。しかしまったく効果がなく、よけいにじれったさが募るばかりだった。

 もう一度腕時計を確認しようとしたときに、明日香のデスクのある部屋に人の気配を感じた。飛び込んでいきそうになる気持ちを押さえてゆっくりと扉を開けた。

 やっと待ち人来る……か。とりあえず、無事が確認できてホッとした。元気な顔が見たいと思う。しかし明日香は俺が部屋に入ってきたのに気がついてるはずなのに、一向にこちらを見ないで、ロッカーにバッグをしまっている。

「明日香?」

 痺れを切らした俺は、名前を呼んだ。すると彼女の背中がビクッと震えた。どうしてそんな反応なのだろうか。考えたくもない不吉な予感が胸をよぎる。

「明日香」
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