副社長と秘密の溺愛オフィス
 彼の大きくて暖かい手がわたしの頬に添えられる。ゆっくりと彼が近づいてくる。わたしはそれに合わせて目を閉じた。

 触れるだけのキスでは終わらない。角度を変えて何度も唇を求め合う。紘也さんはとろけきったわたしを抱き上げた。

 二度目になる彼の寝室。ゆっくりと降ろされた後も、彼からの熱いキスが続く。お互いの舌を絡め合うキスは、羞恥心を溶かし彼へのまっすぐな思いをさらけ出す。
 
キスをしながら紘也さんの手が、わたしのジャケットを肩からはぐ。ブラウスに彼の指がかかると、わたしも同じように彼のネクタイに手を伸ばした。

 お互いの服を夢中で脱がし合う。その間もひとときもはなれたくないというわたしたちの思いはキスを激しくさせた。

 ふたりとも一糸まとわぬ姿になるまで、それほど時間はかからなかった。もどかしそうにはぎ取られたふたりの洋服たちが、床に投げ出されている。

 息が苦しい。けれど胸の高鳴りが、彼への苦しいほどの思いが、そんなことはどうでもよくさせていた。

 チュッと音を立てて、彼の唇が離れた。

 ……どうして?

 不満が顔に出ていたみたいで、紘也さんは軽く笑うとわたしをひとり立たせ、一歩後退った。

「明日香の体……よく見せて」

 彼の艶めいた眼差しがわたしを捉えた。薄明りの中とはいえ彼の視線に生まれたままの姿をさらすのは恥ずかしい。

 とっさに隠そうとした手を彼が止める。
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