副社長と秘密の溺愛オフィス
「ついこの間まで、俺の体だったんだよな? でも全然違う。ここも……」

 紘也さんの手がわたしの肩を撫でた。次いで背中。

「ここも……ここも……」

 次々と彼の大きな手が、わたしの形を確かめるようにして素肌の上を這う。

「どこも……綺麗だ。俺の体だったときと全然違う。……柔らかくて、いい匂いがする。……全部、食べたくなるっ……」

 噛みつくように首筋にキスをされた。

 本当に食べられそう……。

 驚いたけれど、いやじゃない。むしろもっとしてほしい。もっとわたしを欲しがって……!

 全身を唇と手のひらで、翻弄される。勢い余ってベッドに倒れ込んだ。

 わたしにおおいかぶさった紘也さんが、わたしの胸元をきつく吸い上げる。チリッとした軽い痛み。そこには赤い彼の独占欲象徴であるかのような、赤い印があった。

「全部俺のもの……明日香……かわいい。もっと欲しい。もっと深くまで愛していいか?」

 乞うような彼の目に、わたしはうなずいた。

「っ……ん」

「……っ、悪い。やさしくできなくて」

 眉間に皺をよせ、額に汗をにじませる彼の顔にわたしは手を伸ばした。ゆっくりと彼の頬を撫でると、その感覚を味わうかのように彼はうっとりと目を閉じる。

 彼の余裕のない表情が、わたしの心を満たす。 

 もっと愛してほしい……もっとずっとそばにいてほしい。

 熱い吐息が絡まり合い、シーツの波間にふたりが溶ける。

 もつれていたふたりの愛の糸が、今しっかりと結ばれる。

 ベッドサイドに置いてあった、カメオの天使たちに見守られながら。
< 206 / 212 >

この作品をシェア

pagetop