副社長と秘密の溺愛オフィス
 しかし副社長は「まぁ、どうにかなるさ」と、わたしの背中を軽くポンポンとたたいた。

 そうこうしているうちに、次は部屋前のインターホンが鳴る。副社長は玄関に向かい部屋のドアを開けた。

 わたしはその様子を固唾をのんで見守っていた。

 ドアが開いた途端「紘也……」と副社長を呼んだお母様の顔が目の前にいる女性を見て一瞬にしてひきつった。

 その顔を見た瞬間「しまった!」と思った。そして副社長も同じことを思ったに違いない。

「あなた……その格好」

 お母様は出迎えた副社長の姿を、頭からつま先までマジマジと見た。

 紆余曲折を経てシャワーを浴びた副社長は、自分の寝室のクローゼットからTシャツとハーフパンツを見繕って身に着けていた。しかしそれはわたしの身体には大きく、まさに「いきなりのお泊りで彼の服を借りちゃいました」に見えてしまう。

「いえ、あのそれは違うんですっ!」

 わたしは誤解をとこうと、キッチンから飛び出した。こんな状態じゃ、わたしと副社長の間に何かあったと思われたに違いない。

「何が違うというんですか? 説明しなさい、紘也」

 そう言って鋭い目でわたしを射抜いた。そのときになってバカなわたしはやっと気がついた。

 今は、わたしが副社長だったんだ……。
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