副社長と秘密の溺愛オフィス
会社に到着して、この不快極まりない出来事を先に副社長室で書類の整理をしていた明日香に話した。
今日からはこの部屋の主は明日香だというのに、俺が到着するとコーヒーを淹れてくれる。いつもの癖なんだろう。
「女性専用車両に乗らなかったんですか⁉」
驚いた顔の明日香を見て、「あぁ、その手があったか」と思った。女って大変なんだな。
出社してこれから怒涛の一日が始まろうとしているのに、すでにこんなに疲れてしまった。とにもかくにも今日から俺の〝乾明日香〟としての日々が始まる。どうにかやりこなさなくては。
ソファに座ってコーヒーを飲んでいる俺の前に、明日香が緑茶、紅茶、そしてコーヒーのセットを並べ始めた。お茶会でも開くつもりか?
「大変失礼なのですが、副社長が昨日お母様にお淹れになった紅茶、ひどいものでした。ですからこれから最低限のお茶の淹れ方をお教えしたします。そのあと秘書室のルールや――」
「はぁ? それは秘書の――って俺が秘書か」
頭を掻きながら、明日香のレクチャーを頭に叩き込こむ。無駄に思える細かな決まりが多くてうんざりするが、彼女にとっては――今日からは俺だけど――これが大切な仕事なのだ。