クールアンドドライ
 メガネが無くなっていることに気付き、目の前の男を見る。
なんてぇことだ!
目の前の男がメガネを掛けていた。
辞めてくれ。
「ちょおっとおー、返してくださいよ。」
怒りを込め、手を出す。
目の前の男は、余裕な表情で、「似合う?」と、ほざいた。

 「ぜっんぜん、まーったく似合ってませんから。」
「冗談の通じない奴だなぁ。」と、何故かため息を吐かれた。
いいから、返せよ早く!という思いを込めて、前に出していた手を上下に振った。

 課長は、漸くメガネを外すと、「何で、わざわざパソコン用のメガネを掛けて来たんだ?」と、手に持ったまま訊いてきた。
まだ、返してくれるきはないらしい。
伸ばしていた手を引っ込めた。

 「急いでいたので・・」
「ふーん、そんなに急かした覚えないけど?」
「上司を待たせるわけには、いきませんから。」
「へー、上司だって認識はあるんだな。」
「いいから、返してください。」
なんとか冷静を装って、言った。

「本当の理由は、言えねーか。」と、意味不明なセリフと共に、メガネを返された。

 「なんですか?その、本当の理由って。」
メガネを受け取って訊いた。

「壁、つくりたい時に掛けるんだろ?」そう言って、伝票を取り、課長は席を立った。
< 14 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop