クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「なにがあった? 優姫らしくもない」

「そうだね、そうかもしれない。でも、“私らしい”なんて、幹弥になにがわかるの!?」

 十年も会っていなかった。十年前だって私たちはそんなに親しくなかった。ただのゼミの同期。『友達』とさえ呼べるかどうかも怪しいような。

 今だって、ただ定期的に会って体を重ねるだけの関係。それなのに――。

「昨日は……今までありがとう。でも、もう私のことは、ほうっておいて。勝手のこと言ってるのはわかってるけど、全部、なかったことにして」

 一方的に言い捨てて電話を切ると、私はそのまま携帯の電源を切る。項垂れながら玄関から上がり、乱暴にコートを脱ぎ捨てて自分のベッドに倒れ込んだ。

「嫌い、大っ嫌い」

 ぽつりと吐き捨てた言葉は部屋の空気にさっと消える。そう、嫌い。私のことを見下して、憐れんで、面白がるような男なんて。

 ほかにも家に上げる女性だっているのに。暇つぶしのように、私に触れて、翻弄して、楽しんで。

 あの唇には毒がある。「可愛い」って甘い言葉を簡単に囁いて、キスもセックスもなんでもないことのようにできる。――私は、違うのに。

 ぎゅっとシーツを握りしめると、視界が滲んで、世界がぼやける。

 違う。私と幹弥は、最初からなにもかもが違う。住む世界も、見ているものも、考えていることも、お互いに抱いている想いさえ。

 それでも、彼とまた関わることを選んだのは自分だ。だから幹弥を責めるのは間違っている。馬鹿なのは、ピエロなのはいつも私の方だ。

 大丈夫、結果は見えていた。向こうから切られるのか、私から終わらせるか、それだけの違い。あとは時間だけが解決してくれる。

 でも、どれくらいかかるの? 十年経ってもこれで。ましてや今の私は失ったものが多すぎるのに……。
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