クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「もっといる?」

 意地悪そうに尋ねられ、私はふいっと視線を逸らす。

「いらない」

 ぶっきらぼうに返したものの、幹弥は身を起して幸せそうに笑いながら、私の頭を撫でる。……悔しい。

「今日、一緒だった彼女とは、本当にいいの?」

 つい、この場にそぐわない発言に空気が変わり、幹弥の手も止まる。発言を後悔しつつも、私は半ば自棄になった。のろのろと上半身を起こして口を開く。

「彼女もこうやって部屋にあげてたんでしょ? それなのに、あんな態度」

「あげたことない」

 つい責めるような言い草になったけれど、幹弥の返事はあっけらかんとしていた。

「嘘、つかないでよ」

 だって私は見た。彼女のものと思われるコートがこの部屋にあったこと。それを受け取るために彼女がこの部屋に向かうって幹弥に電話したこと。

 そのことを指摘すると、幹弥は微妙な表情になった。

「正確にはこの部屋には、寝室には入れてない。たしかに、彼女は一度ここに来たことがあるけど、それは妹と一緒だったし」

「妹?」

 幹弥に妹がいるなんて知らなかった。けれどさっきのバーでもそんなことを言っていた気がする。幹弥は「話てなかったっけ?」と返してきて、ふたつ年下の妹がいることを教えてくれた。

「たまたま近くで彼女と妹が会っていたときにゲリラ豪雨に見舞われて、ふたりとも濡れ鼠になったんだよ。そのとき妹の案でここに来たんだ。妹は何度かここに来てるから」

「そう、だったんだ」

 私は抑揚なく答える。ときどきここで感じる女性の気配は、どうやら妹さんのものだったらしい。
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