運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「男性でも、運命とか信じるんですか……?」
「というか、今日きみを見つけて、初めて信じたという感じかな。今だって、絶対にこの子を逃がしちゃダメだって強い衝動を、心の奥で感じてる。自分でも理由はわからないけどね」
今まで穏やかだった男性の瞳がかすかに鋭くなり、一瞬垣間見えた色気にドキッとした。
わ、私にそんな強い引力があるなんて、ホントかな……。半信半疑だけど、胸の高鳴りがおさまる気配はない。それに、私も、同じ衝動を感じる気がするの――この人を逃がしちゃ駄目だって。
「わかりました。今日一日、お付き合い……します」
遠慮がちに、男性の手の小指だけにそっと触れて、手をつないでみる。
すると逆に彼の方が私の手を取って、ちょうど私の顔の高さまで持ち上げたかと思うと、長い睫毛を伏せた彼の顔が、その手に近づく。
「ありがとう。必ずきみの心を手に入れてみせるよ」
彼はそう宣言し、まるでお姫様にそうするかのように、手の甲にちゅ、と優しく口づけた。
や、やばい……。今日の私、本当に、映画の主人公かもしれない。
期待に胸を膨らませつつ、運命の彼とのベネチアデートが幕を開けた。