運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


とりあえず、お腹が空いている私のために、目の前のカフェに入ろうと言ってくれた彼。

天気がいいのでテラス席に案内してもらい、私はカプチーノとブリオッシュ、彼はエスプレッソを頼んだ。

真っ白なパラソルの下、小さな丸テーブルをはさんで向かい合った彼は、私の傍らにある大きなキャリーバッグを見て感心したように言う。


「それにしても、勇気あるね。近場ならともかく、こんな場所まで女の子一人で旅行だなんて」

「あ、いえ。昨日までは友達と一緒だったんです。本当は私も昨日のうちに帰国する予定でしたけど、ちょっと、家に帰りたくない事情があって……」

「事情って?」

「父に、無理やり結婚話を持ち掛けられてるんです。帰国したら、その相手に会わなきゃいけなくて……」


正直に打ち明けると、彼はなるほどね……と神妙な様子で頷いた。


「その人との結婚、そんなにいやなんだ?」

「……はい。単に自分が結婚なんてまだ考えられないというのもありますけど、その相手、どうやら“悪魔”のような男らしいんです」


恐怖を滲ませて語ったはずなのに、ほんの一瞬固まった彼は、次の瞬間なぜか喉を鳴らしてククッと笑い出した。

え、と……今の、全然笑い話じゃないんだけど、どうして?


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