運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
真帆の目が厳しいものになり、品定めするように早苗先生を見つめる。私もどうしても睨むような視線を送ってしまうけれど、当の本人は、私たちよりテーブルの上の物に注目していた。
「ねえ美琴ちゃん、この紙くずの山ってもしかして……」
「……婚姻届、です。もう必要ないので」
投げやりに答えると、早苗先生が心苦しそうに眉根を寄せた。それから下唇を噛み、私に向かって頭を下げる。
「ごめんなさい。私の行動のせいで、こんなにあなたを苦しめることになるなんて」
「……いいんです。終わったことですから」
「そんなこと言わないで……お願いだから、私の話を聞いて」
早苗先生があまりに必死なので、今さら何の話を……と反感を抱きつつも、私は彼女の話に耳を傾けることにした。
「昨夜……藍澤先生には、診察をしてもらっていたのよ」
「診察?」
あんな時間に、あんな場所で? まさか“ごっこ”がつくというオチじゃないでしょうね。拭えない疑念から、私はさらに彼女を追求する。
「じゃあ、どうしてクローゼットに隠れたりしたんですか?」
「……その診察が“極秘”のものだったからよ。私、心臓に病があるの。本当なら、今すぐにでも手術しなければならないくらいのね」